日本天文学会1997年春季年会 [V10a]
菅井肇、大谷浩、石垣剛、林忠史、尾崎忍夫、服部尭(京大理)、佐々木実(下関市大)、武山芸英((株)ジェネシア)
1996年秋季年会(V07a:大谷他)で紹介した三次元分光器の設計をすすめている。イメージングファブリペロや
マイクロレンズアレイ等を持ち、ハワイに建設される口径2メートルのMAGNUM望遠鏡と、すばる望遠鏡で利用される。
今回は、この装置が主に用いられるMAGNUMと組み合わせた場合の分光器の概要を述べる。
1.主なモード:
●ファブリペロ - 0".31/pixel,FOV 11'×11' ただし Δv(km/s)=32×θ2arcmin,低分散エタロン(R=400)と高分散エタロン(R=8000)等
●マイクロレンズアレイ - 0".4/lens,FOV 14"×14",スペクトル数~1000本,低分散グリズム(R=1000)と高分散グリズム(R=3000)等
2.光学系配置:コリメータ+カメラ系は1個固定のものとし、全てのモードにおいてこれを用いる。
3.光学設計:360nmから900nmまでに対応している。視野直径55mm内においてこの波長域での
白色光のEncircled energy diagramが80%のエネルギーで直径2ピクセル(=27μm)におさまる。
この性能を確保するためには分光器内光軸と望遠鏡光軸が、平行移動成分1mm、角度30'以内の
ずれにおさまっている必要がある。これは満たされる。コリメータ+カメラ系の透過率は370nm以上の
全波長域で50%を越え360nmでも30%以上ある。さらに透過率をあげるため多層膜ARコートを
国立天文台の協力を得て検討中だ。
4.構造設計:150kg以下という重量制限の範囲内でも、上述の光学性能が達成されることを
保証するために光学基板の最大たわみを数10μm程度におさえるべく設計中である。
5.検出器部(今回の尾崎他を参照):EEV製のARコート付き裏面照射型2K×2K CCDを用いる。
冷却は冷凍機で行う。