日本天文学会1997年春季年会 [V23b]
表泰秀、武山芸英、田中培生(東大理)、榊原佳子(東海大工)、田中済(国立天文台)
赤外シミュレーターは、国立天文台三鷹キャンパスにある有効径1.5mの経緯台式反射望遠鏡である。
我々は、1996年4月末に行った主鏡蒸着の前後で、望遠鏡の光学性能評価及び光軸調整のために恒星を
利用したハルトマン・テストを行った。光軸調整後、精密なポインティングのためにポインティング・
アナリシス(又は、望遠鏡解析(Telescope Analysis))を行った。
ハルトマン・テストのために、望遠鏡のトップリングの位置に格子状配列の72個の穴を持つハルトマン
板を取り付け、CCDをカセグレイン焦点の位置に固定した。焦点の前後の画像を撮るため、副鏡を前後に
動かして焦点から役±100mm離れた位置での画像を撮った。シミュレーションによると副鏡の動きによって
生じる球面収差は焦点の位置で大部分相殺され、結果には影響しない。ハルトマン定数を求めるため、
古典的な方法と岡山天文台の方法と共に、もっとも光線追跡に忠実な最小錯乱円を探す方法を使った。
この方法により焦点の前後でのスポット・ダイアグラムを見ることで直感的に収差を判断できる。
さらに、FITS形式の画像処理やハルトマン定数、ツェルニケ係数、鏡面形状誤差図等を求めるGUIを持つ
プログラムを開発した。テストの結果、主鏡のセッティングに異常がない場合はハルトマン定数の高度
依存性は弱く、ハルトマン定数が約0.34"であり、ツェルニケ係数から、非点収差が相対的に大きい
ことがわかった。
3回のポインティング・アナリシスでは、一晩に33個から76個の星を撮り、方位角と高度角に対する
指向誤差の解析及び補正を行った。望遠鏡のエンコーダーの特性から生じる体系的な指向誤差成分を
検出し、その成分を補正するために補正項を望遠鏡解析の方程式に追加した。以上の補正を行った後の
指向精度として、σ(δAZcosEL)=±1.28("),σ(δEL)=±2.10(")を得た。