日本天文学会1997年春季年会 [V26b]
野口本和、一本潔、田中伸幸、篠田一也、熊谷収可、加藤偵博、西野徹雄、福田武夫(国立天文台)、武山芸英((株)ジェネシア)
国立天文台乗鞍コロナ観測所では1950年に開設して以来、10cmコロナグラフに
直視分光器(分散能:2.5nm/mm,530.3nm)を取り付けて眼視によるコロナ緑色輝線強度観測(530.3nm FeXIV)を
続けてきたが二次元データしか得られず、かつ時間分解能が悪い。近年になり、短時間で変動する
太陽コロナ中の磁場、速度場などの物理量の検出ができうる高精度の観測装置の検討を進めてきた。
1995年に小型の復屈折素子(透過中心波長幅:0.1/530.3nm)が製作でき、透過中心波長をシフトさせる
液晶遅延素子(LCVR: Liquid Crystal Variable Retarder)を貼りあわせた小型の復屈折フィルター
(最大波長シフト量:±0.1nm)を開発した。観測装置は、通常のコロナ観測では復屈折フィルターに
組み合わせた冷却CCDカメラで観測を行い、プロミネンスなどの現象は多層膜干渉フィルター
(透過中心波長幅:0.05/656.3nm)に組み合わせた写真カメラで行う。撮像系は光路の切り替えなく
ニ波長同時に観測できる。
観測装置は1996年11月末に10cmコロナグラフに設置され、直視分光器にかわり観測を開始した。