日本天文学会1998年春季年会 [V09a]
山室 智康 禅野 孝広、佐藤 修二(名大理)、武山 芸英((株)ジェネシア)、松枝 義勇(カルニュー光学(株))
赤外線天文学技術の進歩に伴い、様々な装置が開発されている。しかし光学材料として用いる結晶やガラスの低温特性はほとんど知られておらず、
数少ない既知の結晶材料のみを利用して、光学系を製作しているのが現状である。一方、光学ガラスメーカーからは、近赤外線領域でも有効と思われるガラスが
多々製造されるようになってきている。
我々は、これら光学材料の低温下における屈折率測定を行った。
測定においては、カルニュー光学社製のプリズム偏角測定装置をベースに、輝線検出回路やエンコーダーとパソコンを用いた偏角読取解析機構、
試料となるプリズムの温度調整機構などを独自製作し、測定可能範囲として、試料温度:80~300[K]、測定可能波長範囲:0.36~1.5[micron]、屈折率n
の温度による変化分の測定誤差:±3e-5 の装置を製作する事が出来た。なお装置は、測定可能波長域を 4[micron] まで拡大し、測定精度を±1e-5 まで
上げるために、現在も改良中である。
現在はこの装置を用いて、試料の屈折率の温度依存性を測定中である。最終的には20種を超える試料を測定予定であるが、1月8日の時点で、
溶融水晶、S-FPL53、S-FPL51、S-BSL7、S-LAL8、PBH1、BPH8、S-TIH14 (以上7つはOHARA社製)の計8種類の材料を測定した。
これらの結果では、S-FPL53とS-FPL51 は温度に対しての dn/dT の変化は小さく、波長依存も小さいが、BPH8 や PBH1 など、色分散が大きい材料ほど、dn/dT が温度で強く変化し、
その変化が波長にも強く依存している傾向が見られた。また S-TIH14 の 365[nm]輝線測定では、吸収率が温度と共に変化し、低温ほど吸収が少なくなる現象も確認された。
今回の発表では、装置開発も含め、試料個々の測定結果を報告する。