日本天文学会1998年春季年会 [W13b]
秋岡 眞樹(通総研平磯)、末松 芳法、一本 潔、花岡 庸一郎、常田 佐久、坂尾 太郎、清水 敏文、鹿野 良平、小杉 健郎、桜井 隆(国立天文台)、武山 芸英((株)ジェネシア)
「ようこう」に続く太陽観測衛星として、可視光磁場望遠鏡、XUV分光撮像望遠鏡、X線望遠鏡からなる衛星ミッションの概念検討を実施している。
可視光磁場望遠鏡は、太陽光球面の磁場と速度場をこれまでにない空間分解能と偏光計測精度で観測し、従来の地上観測では不可能であった磁束管の偏光観測等を行う。
これによって、活動現象やコロナ加熱などの鍵を握ると考えられている表面磁束管やその光球速度場との相互作用の本質を解明する事を目的としている。
口径50cmのグレゴリアン型望遠鏡に、狭帯域リオフィルタ、干渉フィルター及び回折格子分光器から構成される焦点面パッケージをもつ。パッケージ内には、
偏光解析装置(波長板及びポラライザー)、像安定鏡、フルフレーム型もしくはフレームトランスファ型のCCDカメラなどを備え、様々な科学的要求に応える事のできる
フレキシビリティを備える計画である。本望遠鏡のミッション達成には技術的に解決すべき様々な問題が存在する。本報告では、現在の概念設計とともに、前回の報告の後になされた
検討及び研究により得られた成果及びそれに基づく設計解について報告する。 望遠鏡回折限界結像を達成するためには、主望遠鏡部の構造材の変形をトレランス内におさめるとともに、
副鏡の位置ずれなどの構造変化に寛大な光学設計解を見つける事が重要である。このため、グラファイトシアネートによるCFRP部材の試作研究を行い、きわめて膨張係数が低く、
軽量・高剛性の構造部材の試作に成功した(常田他1997)。また、グレゴリアン系のみで閉じた光学設計解を放棄し、後方のレンズシステムと有機的に連結した光学設計解を
探す努力を行い、副鏡の位置ずれ等にきわめて鈍感な光学設計解を見つける事ができた。全体構成については、主望遠鏡の後方に焦点面パッケージを配置する構成を新たに検討した。
これにより、人為偏光が発生しにくく、かつコンパクトなシステムとする見込みが得られた。講演においては、これまで困難と思われていた技術的問題点に関して、
得られた解決策を報告し、併せて現在の概念設計案の概要を示す。焦点面パッケージは日米共同開発となる予定であり、日本側の概念検討を中心に報告する。
常田他 高精度スペース光学望遠鏡の主要要素技術の開発 科研費成果報告書、1997年