日本天文学会2000年秋季年会 [V19a]
菅井 肇、大谷 浩、尾崎 忍夫、服部 尭、河合 篤史(京都大理)、他京都三次元分光器チーム、武山芸英((株)ジェネシア)
1997年春季年会(V10a: 菅井他)で、三次元分光器第2号機の基本設計を述べた。この分光器は、マイクロレンズアレイを用いた多瞳分光モードを
含めた多モードを有し、すばる望遠鏡等に搭載される予定だ。2000年6月に、この分光器を国立天文台三鷹の1.5メートル望遠鏡(赤外シミュレータ)にとりつけて、
姿勢差テストや、実際の天体を用いたテスト観測等を行った。これらによって得られた総合的な性能評価を報告する。赤外シミュレータにとりつけたのは、
これにより、すばると同じ姿勢(経緯台式におけるカセグレン焦点)かつ同じF/比(12.2)でテストを行うことができるからだ。ただし、
これは赤外線望遠鏡なので観測波長を赤に限り、グリズムはHα波長を含むものを用いた。
結像性能に関して、収差による、スリット像や多瞳像の劣化がほとんど見えないので、問題無いことが確かめられた。マイクロレンズアレイ分光モードにおいては、
多瞳の位置と形が、フラットフィールド用光源や波長較正用光源を用いた場合と、望遠鏡で実際の天体を用いた場合とで一致することが確認された。
また、分光器の姿勢を変化させた時に、瞳像の位置が検出器上でどのように変化するかを測定した(今回の服部他を参照)。
これらは、フラットフィールドや波長較正用スペクトルの取得法/取得必要頻度/解析法に直接的に結び付いてくる。約1000本のスペクトルが検出器上にどの様に
展開されるかが設計通りになっていることも確かめた。つまり、隣のスペクトルとの間隔5.5 pixel、波長分解能2 pixel=5Å、1本のスペクトルの波長領域
6200Å~7500Åが実現されていた。
テスト観測は、分光測光標準星HD109995、および惑星状星雲NGC7027等に対しマイクロレンズアレイ分光モードを用いて行った(河合他を参照)。
分光測光標準星の観測結果から、このモードにおけるHα波長付近での分光器システム全体の効率は、設計通り~ 10%と見積もられた。