日本天文学会2001年秋季年会 [A26b]
○河北秀世、衣笠健三、濱根寿彦 (ぐんま天文台)、武山芸英、山室智康 (ジェネシア)、藤井貢 (藤井美星天文台)
2001年4月4日、近日点通過を前にして急増光したC/2001A2(LINEAR)彗星の可視低分散分光観測を、ぐんま天文台65cm望遠鏡+小型低分散分光器を用いて行った。
同彗星は急増光後も標準光度にして5等以上の増光を維持している。これは、従来観測されてきたような一過性のバースト現象ではなく、
なんらかの原因によって彗星核表面にフレッシュな氷が暴露したことで、活動領域が急激に増加したためと考えられる。
また、近日点通過後の7月2日、同彗星を28cm望遠鏡に取り付けた低分散分光器で観測することに成功した。
4月初めの急増光中には、彗星核内部のフレッシュな氷からの蒸発を見ていると考えられる。よって、従来観測することが困難であった彗星核の比較的内部の情報を
知る手がかりになると期待される。4月初めの観測から、この彗星は一般的な彗星に比べて揮発性成分に富んでいることが分かった。
得られたガス/ダスト比は、log10(Q(h2O)/Afρ)=26.6 である。更に、可視スペクトルから得られたガスの組成は、Haserモデルを仮定した場合、Q(CN)/Q(H_2O)=0.34%、
Q(C_2)/Q(H_2O)=0.52%、Q(NH_2)/Q(H_2O)=0.38%となる。また、近日点通過後の観測からは、Q(C_2)/Q(H_2O)=0.44%、Q(NH_2)/Q(H_2O)=0.61%となった。これらの結果は、
他の彗星における観測とも、おおむね一致する。また、ガス/ダスト比は近日点通過後でも log10(Q(h2O)/Afρ)=26.6となった。発表では、他の彗星との比較、
特に昨年7月に崩壊したC/1999S4(LINEAR)彗星との比較を通して、今回得られた結果について議論する。