日本天文学会2003年春季年会 [V06b]
○佐々木 実(下関市大/京大理)、池田 優二((株)ジェネシア)、菅井 肇、服部 尭、河合 篤史(京都大理)、尾崎 忍夫(西はりま天文台)、 小杉 城治(国立天文台)、他京都三次元分光器チーム
三次元分光(面分光)観測は、単に観測の効率を向上させるだけでなく、同一のデータから複数の輝線における空間構造と
速度構造が得られることによって、それらの構造の関係を今までにない精度で明らかにすると期待されている。
今回、共生星HM Sge周囲の電離ガスを京都三次元分光器第2号機(3DII)で観測することにより、その性能の検証を行った。
観測は、すばる望遠鏡に3DIIを搭載して、2002年8月の試験観測期間(すばる/3DIIのファーストライト)に、
マイクロレンズアレイ分光モードを用いて行なわれた。すばる/3DIIの組み合わせでは、3".4 × 3".4 の視野を 0".094 の
空間サンプリングで観測し、約1000本のスペクトルを同時に得ることができる。
今回の観測では、波長分解能 R ~ 1200で、4200-5200Å と6200-7500Å の2つの波長域について、視野をずらしながら
各10 frameのデータを得ることができた。観測時のseeingは約0".4であった。
得られたスペクトルからは、Hα, Hベータ, Hガンマ,He IIλ4686,[N II]λ6548/6583, [O I]λ6300,[O II]λ7319/7330,
[O III]λ4363, 4959/5007,[S II]λ6716/6731など多くの輝線に空間的な拡がりが認められる。
そこで、これらの約1000本のスペクトルを解析して、輝線像と連続光像を再合成し、輝線による速度場や、輝線強度比マップを得た。
また、解析方法の工夫により、S/Nを従来の方法よりも2割程度向上することができた。これらのマップには今までに知られていない
構造が認められ、三次元分光観測の有用性が確かめられた。本講演では、得られた各輝線のマップをもとに、HM Sgeを取り囲む電離ガスの
密度/速度構造とその起源についても議論する。