地球電磁気・地球惑星圏学会 2003年秋講演会 (D31-P063)
坂野井 健, 小淵 保幸, 岡野 章一(東北大学大学院理学研究科),
平原 聖文(立教大), 武山 芸英, 金井 美一(ジェネシア)
近年の人工衛星搭載機器の性能向上に伴い、高度数千kmに存在するオーロラ
加速領域の詳細な報告がなされている。しかしながら、それらの粒子加速
メカニズムと、オーロラ発光の対応関係は十分に明らかにされていない。
特に、オーロラが人工衛星の粒子構造(1km程度)よりも小さな空間構造
(100m以下)を持つことや、アーク・レイ・パッチなどの様々な形態を
引き起こす加速メカニズムが未解明である。その理由として、オーロラ発光と
粒子の詳細な同時観測が難しい点が挙げられる。
INDEX衛星は、粒子とオーロラ発光の高時間分解観測によりオーロラ微細構造の
解明を目的としている。2004年冬期にH2Aロケットのピギーバックとして
高度680kmの極軌道(1030 - 2230 MLT)に投入される。我々は、それに搭載
される多波長オーロラカメラ(Multi-spectral Auroral Camera; MAC)の
開発を進めている。
MACによるオーロラ観測の特長を以下に示す。(1) 3つのCCDと干渉フィルター
(N2+(1N) 427.8 nm, OI 557.7 nm, N2(1P) 670 nm)による、3波長狭帯域
イメージング観測。(2)粒子同時計測モード時は、磁力線フットポイント
近傍の約110x110kmの範囲を約1.7km、120msecの空間・時間分解で撮像。
(3)高度分布モード時は、衛星から約2000km離れたリム方向の270x270kmの
範囲を約4km、1secの空間・時間分解で撮像。
現在はフライトモデル(FM)フェーズであり、FMを用いた電気等の各種試験を
行っている(小淵他(本学会)を参照)。今回、微細なオーロラ発光を
捉えるのに不可欠な、高精度光学系の開発、調整とその性能評価について、
詳細に報告する。
光学系は、合成石英レンズ6枚から構成されるf=50mm直焦点で、最前面には
耐放射線用の石英板と干渉フィルタが配置される。レンズ単体試験では、
視野全面(7.6度)で歪曲収差が0.5%以下であること、スポットサイズ直径が
~20μm以下であることが測定された。これは、オーロラ撮像時の1ビン
(16x16ピクセル)のサイズ(~100μm)より十分小さく、観測要求を満たす
ことが分かった。
さらに、レンズ部をカメラ筐体に取り付け、CCDとの光軸、アライメント
ならびにフォーカス位置調整を行う必要があり、そのための試験装置を
開発する。これは、コリメータ部とカメラステージ部から構成される。
すなわち、コリメータから射出された白色平行光を、レンズに対して水平と
垂直の両方向のいくつかの角度で入射させる機能を持ち、MACに限らず
光学系一般の調整に利用できる。この試験装置には、色収差の無視できる
白色平行光を射出することと、カメラ側入射角を変えるためのステージを
設けることが求められる。
これにより得られた画像から、レンズ-カメラ筐体間、またはCCD基板-
カメラ筐体間に挟むシムの量を決定する。また、最終的には調整後に
性能評価試験を行い、レンズ単体試験結果との比較を行うことで、光学系の
精度を検討する。