日本天文学会2009年秋季年会
桜井 隆、荒井武彦、篠田一也、
鈴木 勲、野口本和、萩野正興、
花岡庸一郎、福田武夫、宮下正邦(国立天文台)、
山崎高幸(国立天文台、名大STE研)、
武山芸英(ジェネシア)
国立天文台三鷹キャンパスの太陽フレア望遠鏡では、1992年よりフィルターマグネトグラフによる
活動領域のベクトル磁場観測を行ってきたが、2005--2008年にその一部を改造し、分光器により赤外域の
偏光線輪郭を観測する、ストークスポラリメータを製作した。
観測するスペクトル線は、光球磁場を測定するためのFe 1.56μm(g=3)と、彩層磁場を測定するための
He1.083μmである。
フィルターマグネトグラフで用いているFe 630.25nm (g=2.5)と比べ、ゼーマン分離Δλ/λは約3倍になる。
本装置では、太陽全面にわたるベクトル磁場観測を行い、磁気ヘリシティの全球分布を長期間にわたり
観測することを目標としている。
用いている赤外線検出器はベルギーXenics社のInGaAsカメラで、512×640素子である。
0.9--1.7μmで量子効率80\%以上を有し、読み出し速度は60フレーム/秒である。カメラの640素子を分光器の
スリット方向に置いて太陽半径程度をカバーし、太陽の北半分と南半分を別々に観測し、あとでデータを
一つにまとめる。
最終的には1ピクセルが1.75秒角、約1200×1200ピクセルの太陽像になる。分光器はRichardson Gratings製の
大きさ11×12cm、刻線数87本/mmの回折格子と、リトロー配置のコリメータ・カメラミラーからなる。
1.56μm帯は13次のスペクトルで波長分解能は23万、1.083μm帯は19次のスペクトルで波長分解能は34万となる。
本装置は定常運用を目指して、現在、調整と試験観測中である。