ホーム > 技術支援サービス > 横収差図の読み方 -- レンズ設計を始める前に
図19の横収差図を図26に再度示します。
軸上光束の横収差図に着目すると、瞳座標に関する3次曲線の特徴が明確に現れていることから、球面収差の存在は 明らかです。
注意を軸外光束に対する横収差図に移すと、主光線付近の横収差の勾配から像面湾曲の存在を読み取れます。
そのマージナル領域では、軸上光束の横収差と同様に奇関数成分が含まれていることから、軸外光束にも球面収差の 影響が及んでいる事がわかります。
ここで上/下マージナル光線の収差量に着目してみましょう。 小さな画角に属する光束と比較して大きな画角に属する 光束では、上側マージナル光線の横収差量が減少していることがわかります。
図26:画角が大きな光線で上側マージナル光線が減少する横収差図
一方、下側マージナル光線の横収差量は 軸上光束から最周辺画角まで大きな変化はありません。 このような傾向が現れるの理由は、収差量の隠れた成分として内向性のコマ収差が存在しているからです。
図27に、画角が大きな光束ほど内向性コマ収差が顕著となっていく様子を示しました。 球面収差のなごりである マージナル光線近傍の奇関数成分と、偶関数(コマ収差)成分が加算されることで、画角が大きくなるほど、上側マージナル成分の横収差はそれらがキャンセルしあって横収差量が減少していく一方、下側マージナル光線では、逆に強調されていく・・という構造です。
図27:コマ収差成分により影響を受ける横収差量
この例にみられるとおり、ごく一般の光学系における横収差にはデフォーカス成分、球面収差、コマ収差、像面湾曲が 複合的に含まれています。 光学系の性能を考える際には、これらの収差をそれぞれの成分に切り分けて考えることが 重要です。
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