波長λ=0.9~2.5μmに渡って天体からの赤光を分光する "NICE" は 東京大学大学院の田中研究室が中心となって開発した天体観測装置です。 装置全体を123K(-150℃)程度に冷却することで、装置が放射する 赤外輻射(backgrond radiation)を最少に抑えています。 その結果、観測対象の微弱な情報を 高い S/N で取得することに成功しました。
赤外光学系、真空・冷却系など、全系にジェネシアの技術が採用されています。
通常の光学ガラスの他、CaF2やBaF2等の光学結晶をレンズ材料に使用し、光学性能を大幅に向上させました。各光学材料の屈折率は、低温環境における実測値を使って設計してあります。
すべての物質は、その温度に見合った熱線=赤外線を放射しています。レンズやホルダも例外ではありません。 測定対象の暗い光が、その放射に埋もれてしまうことを避けるため、光学系を約-150℃に冷却しています。 この温度で最高性能が達成される様に、各部品は低温環境に対して最適化されています。
広い波長域にわたる高分散光を実現するため、“エシェル”および“クロスディスパーザ”の2種のグレーティングによる分光方式を採用しました。 波長分解能としてλ/△λ=3000を得ています。
熱輻射低減のため光学系を-150℃にノイズ低減のため検出器を-200℃に冷却しています(無振動冷凍機を使用)。 駆動部は低温環境下で安定して動作するよう、摩擦の発生しないバネ式のスライド機構を採用しています。
安定した冷却性能を実現するため、装置全体を約10e-6 [torr]の真空に保っています。 真空度を維持し光学系や検出器をクリーンに保つため、揮発性のある潤滑材は使用せず固体潤滑材を採用しています。
効率の良い装置運用をめざして専用のソフトウェアを開発しました。 装置の状況がリアルタイムでモニタされます。さらにハードウェアの制御や画像データの取り込みなど、一連の操作がGUIから簡便に行えます。。