宇宙空間は真空のため、熱が逃げにくい環境にあるといえます。このような環境下では、 熱膨張やレンズの屈折率変化(dn/dT)による光学系の性能変化が問題になります。
一方で、宇宙は大気のゆらぎの影響を受けないため、高空間分解能の観測に適した環境ともいえます。 その宇宙空間で、温度変化が生じても十分な光学性能を発揮するため、光学設計に熱解析を導入した事例です。 基本理論から具体設計までを体系的に組み立てることで温度変化が生じても、特性変化の小さな光学系の 設計に成功しました。
波長 388nm から 690nm までの範囲で、高い透過率を維持しつつ 同時に4波長で軸上色収差が補償されています。
焦点位置fの温度T に対する変化率 df/dT は、 (3.7e-6)f/K です。 つまり 焦点距離270mm に対して 温度1℃あたり1μmの変化しかしないということです。 この結果、環境温度 10℃から40℃以上の範囲で Strehl比は常時 0.96以上を達成しました。
この技術は、車載/航空機搭載光学系 や プロジェクタのように、熱源のすぐ近くにレンズが配置される光学システムに 応用できます。
(宇宙科学研究所 太陽観測衛星 Solar-Bの実績より引用)